今年の7月に愛犬がお空に帰った。その後、「また犬を飼いたい?」という質問を時々受ける。私の答えは「もう、いいかなー」。詳しい説明はしない。長くなるし、そこまで詳しく聞きたいと思うような質問でないだろうから。
でも、私がなぜもう犬を飼わないと決めているのか、本当はしっかりと説明したい。SNS等であの子に似ている子を見かけると、心が揺さぶられる。でも、もう飼わない。端的に言えば、わんこの一生を見守る気力と体力と経済力に確信が持てないから。
うちのわんこは15歳5か月で虹の橋を渡った。詳しいデータは一切知らないけれど、ここ10年ほどで、犬猫などペットの平均寿命は着々と伸びているのではないだろうか。人間の医療の進歩ほどではないにしても、さまざまな病気の治療法や症状を緩和させる手法がかなり発達しているように見受けられる。
うちのわんこは、10歳頃まではとても元気だった。動物病院にも、予防接種ぐらいでしか行っていなかった。ところが10歳になろうとしたとき、心臓病があることがわかった。12歳のときに前庭疾患を発症して、そこから15歳までさまざまな病気をした。心臓病になったときから少しずつ通院回数は増え、亡くなる直前は週に2~3回、緊急な症状があればもっと、動物病院に通っていた。月々の治療費と薬の代金は膨れ上がり(大学生の息子の学費と同じくらいだった)、最後の方は夜も家族で交代でわんこに付き添い、数時間のこまぎれ睡眠で体力を保っていた。大切な家族である彼女にとって最善の選択肢を模索する日々が続いた。お散歩とごはんとおやつが大好きな彼女がお散歩に行きたがらなくなって、もう、おうちのなかでのんびりと、美味しいもの(腎臓病もあったので、食べられるものに制限はあったものの)を食べて楽しめる時間をできるだけ長くする、というのが目標になった。
たとえば、今、パピーを迎えたとする。15歳まで生きたとして、私はその頃70歳手前の年金受給者(まあ、私が生きているとして)。そこで、同じようなケアをしてあげられるだろうか?同じ薬代を出してあげられる?同じように自分の睡眠を細切れにして、夜間付き添ってあげられる?
私が出した答えはノー。たぶん、無理。
それならば、わんこに十分なケアをしてあげられる自信がないなら、最初から飼わない方がいい。わんこにかかわりたいなら、動物愛護センターや保護犬施設への寄付など、ほかにできることはある。だから、わんこのグッズはすべて処分した。
お空に帰った愛犬には、自分が考えられる限りのことをしてあげたつもりだけれど、それが彼女にとって最適だったのか、もっと別の方法はなかったのか、もやもやしたものは残っている。お医者さんに提示されたオプションの中で、私たち家族が最良と思えるものを選べる体力、気力、経済力がかろうじてあったのは、本当にたまたまのことだった。夫と私のふたりであの子の最後を看取ることができたのは、偶然のことだ。歯車がちょっと狂っていたら、つらい思いをさせていたかもしれない。
だから、私はもう犬(ペット)と一緒に暮らさない。でもそれは、お空に帰ったあの子をうちに迎えたことを後悔している、ということではない。犬を飼ったことがなく、特に犬に愛着もない私が、夫が犬好きだし、息子は一人っ子だから、犬が一匹いてもいいかな、くらいの軽い気持ちで、深く考えずあの子を迎え入れたこと、軽率だったとは思う。それでも、当時の私を褒めてあげたい。私は何度もあの子に救われて、いなくなった今も、救われている。いつか私がこの世からいなくなるとき、どういう気持ちなのかはわからないけど、あの子に会える楽しみだけは感じていることは確信している。